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2015-06-24

義経の厳しさと思いやり「一谷嫩軍記」熊谷陣屋(文楽・歌舞伎)

 義経主従クラスタに捧げる演目紹介2。今回は熊谷陣屋。

 「一谷嫩軍記」は、一の谷の戦いに取材した時代物の人形浄瑠璃(文楽)で、後に歌舞伎にも移入されました。
 その中でも「熊谷陣屋の段」という部分が有名で、文楽でも歌舞伎でもこの部分のみを抜き出して上演されることが多いです。通しで上演されれば義経の出番がかなりあるっぽいんですが、残念ながら私は通しでみたことがありません。

 「熊谷陣屋」には実は義経の出番はさほどありません。それなのに義経主従クラスタにこの演目を勧めるにはワケがあって、
 この悲劇(悲劇なんです)を引き起こしているのは義経。
 義経クラスタにはぜひ、ウラには義経がいる! ということを発端から常に念頭に置いてみていただきたい。

「一谷嫩軍記」三段目切 熊谷陣屋
 物語がはじまると、美しい桜の若木が立っていて、その前には弁慶の立札があります。
「一枝を切らば一指を切るべし」(桜の枝を切った奴は、指切り落とすぞ)
 この桜の前で町人たちが
「これは義経様が花を惜しんでの立札であろう。しかしおそろしいことだ。間違いのないうちに帰ろう」
と言って帰っていきます。このシーン、ポイントなので覚えておいてください。

 すると陣屋に熊谷の妻、相模がやってきます。初陣を飾った息子のことが心配でこんなところまで来てしまったのですね。
 続いて、平敦盛の母、藤の方がやってきます。この人は、熊谷夫婦にとっては大の恩人です。彼らは恋愛結婚なのですが、本来許されない仲だったのを、この人のとりなしによって結婚することが出来たのです。
 藤の方は、熊谷が敦盛を討ったことを知り、仇討ちするから助太刀せよと相模に言う。相模は困ります。
 そこに義経クラスタの敵、梶原がやってきて、熊谷が帰ってくるまで待つと言って奥へ引っ込みます。

 さて、熊谷が帰ってきます。この熊谷登場のシーンも後で意味の分かる心情表現などがありますので、細かく見ているといいかもしれません。
 相模はいったん藤の方をかくし、熊谷を出迎えます。息子を心配してこんなところまできたこと、また息子が怪我をしたと聞いただけでうろたえる妻を熊谷はたしなめます。
 相模が熊谷に、なぜ敦盛を討ったのかと聞くと、「戦場では致し方ない」ことと答える。たまらず藤の方が息子の敵を取ろうと飛び出します。
 驚いた熊谷は必死に藤の方を押しとどめ、敦盛の立派な死に様を語って聞かせます。
 実はこの場面、熊谷は真実をそのまま語っているわけではないのですが、その腹芸が見所の一つです。
 熊谷、相模、藤の方のそれぞれの心情。みていて切ないものがあります。

 相模、藤の方に帰るよう告げた熊谷はいったん引っ込み、敦盛の首桶(首をいれた桶)を持って現れます。そこにやってくるのは、お待たせいたしました、御大将義経公です。
 御大将自らがなぜ?
 そして嘆き悲しむ藤の方の前で、敦盛の首実検(本当に敦盛の首か確かめること)が行われるのです。

 実は「熊谷陣屋」の後半には壮絶な大どんでん返しがありますが、あえてそこには触れませんでした。(調べたらすぐ分かっちゃうと思うけど)
 初回は知らずにみて、2回目は知って見ると、一つ一つのことば、一つ一つの行動の意味が違って見えて面白いかなと思います。

 始めてみた時の私の感想は「義経ひどい!!」 というものでした。
 しかし、二度、三度みると、義経は決して非道な人物としては描かれてはいない。むしろ部下への思いやりもある、情け深い人物です。
 ここに書けなかった後半部分で、義経の情け深さ、義理堅さなどがしっかりと描かれています。ここを紹介できないのは心苦しいのですが、ぜひ本編をみてください。
 義経がこの悲劇に置いて、こんな遠回りの方法を取ったのも、熊谷に逃げ道を作るためだったのかもしれません。
 「そこまでやる必要あるのかな」という疑問も湧きますが、情愛よりも義理、忠義にいきる武家は、そこまでやらなあかんのかもしれません。

 最初の感情を抑えた熊谷、主君義経に立札を叩き付ける熊谷、そして幕切れの熊谷の悲しみ。
 それぞれの心情描写もすばらしく、心を打つ面白い演目ですので、是非ご覧ください。

 みたくなったみなさま。心配要りません。
6/28日にNHK Eテレにて
文楽 二代目吉田玉男襲名 一谷嫩軍記 放送します!!!
http://www.nhk.or.jp/koten/invite/
是非ご覧ください!!!



源義経・源頼政ゆかりの地一覧 文楽・歌舞伎演目解説 ページとばし用
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2015-06-23

弁慶推しには絶対オススメ! 主従の愛に涙を禁じえない名作「勧進帳」(歌舞伎)

 刀剣乱舞の影響で義経様にまた恋をしている私は、同じような人がいっぱいいるんではないかと、
義経主従が出てくる歌舞伎や文楽は需要があるんではないかと!!
 思い立ちまして、まずは勧進帳を真面目にでなく、ちょっと浮かれた視点で語りたいと思います。
 正当な見方とは程遠いので、見る人によっては不快かもしれません。ミーハーです。
安宅関
安宅関に建つ、弁慶・富樫・義経の像


<演目紹介>
 義経一行を捕まえるためだけに作られた臨時の関、「安宅関」。
 そこを通ろうとする義経一行を地元の豪族、富樫が見咎めます。
 偽山伏ではないかと言われて山伏問答をしたり、仏像勧進のための行脚であることを証明するために、ありもしない勧進帳をその場の即興で読んだりと、色々がんばる弁慶。
 疑いが晴れ、関を通ろうとするも、強力に化けた義経に気付かれ、もはやこれまでと剣を抜きかける四天王を必死に押しとどめて、弁慶は「お前が義経に似ているからだ!」と主君である義経を咎め、打擲します。
 彼らの正体に気付きながらも、弁慶の忠義の心に打たれ通す富樫。がんばる弁慶。そのがんばりを認め、ねぎらう素晴らしい主君・義経。というこのかっこいい3人の男を愛でられる演目です。

 この演目はなんと言っても弁慶!!! 弁慶役者が良いか悪いかで全てが決まると言っても過言ではない!

 乱暴者のイメージの強い弁慶ですが、この演目ではかなり理性的。
 山伏問答も勧進帳を読むシーンも冷静に切り抜けます。

 そしてなにより、義経主従クラスタとしてのクライマックスが義経の正体がバレかける(ていうかバレる)シーン!!
 もはやこれまでと剣を抜きかける四天王を必死にとどめ、ついには義経を折檻することで疑いを晴らそうとする弁慶。ここの緊張感は!!! ハンパない!!!(いい役者だと)
 立派な死を求め剣を抜きかける四天王をとどめるのも、主君に手を上げるのも全て、義経を生きて落ち延びさせたいという一心から。弁慶……!!

 そして、色々あって(めっちゃはしょりましたが本当はこの辺も見所)無事関を抜けられた義経主従。
 弁慶は義経への非礼の数々を涙ながらに詫びます。弁慶……!!
 しかし義経さまは怒りません。だって弁慶の行動はすべて忠義からだもの。
「判官御手を取り給い」からはじまる主従の深い絆は涙なしには観れないですね。義経主従クラスタ的には。

 また富樫が出てきたりして色々あって(ここも本当は見所)、義経たちを先に逃がした弁慶は、急いで追いかけるのでした。(これが有名な飛び六方のシーン)

 いろんな人が勧進帳をしているのですが、最近(?)みた中で一番感動したのが、安宅関跡に建つ「勧進帳ものがたり館」で観られる、こまつ芸術劇場うららのこけら落とし公演の勧進帳(弁慶:團十郎、富樫:三津五郎、義経:芝雀)のダイジェスト映像。
安宅関のある小松市の公演ということもあってか、非常に気合の入った弁慶で、本当によかった。
 歌舞伎で使う衣装なども展示されているので、行ってみてもいいかも。


 勧進帳は文楽にも「鳴響安宅新関」というタイトルで輸入されていますし、別脚本で「御摂勧進帳」という歌舞伎もあります。この間、菊之助と松緑で観ましたが、富樫の苦悩があんまりかかれていなかったりとライトタッチなんだけど、主従の絆はちゃんとかかれていて、弁慶が暴れるシーンもあって、結構楽しかったですのでこれらも是非。

 これは義経主従中心の紹介なので、まじめにちゃんと勧進帳を知りたくなった方は文化デジタルライブラリーにめっちゃ気合の入った勧進帳ページがあるのでみてください。そしてぜひ劇場へ!
http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/contents/learn/exp5/index.html



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Author:tsubana
大阪在住、社会人やってる隠れのオタです。最近歌舞伎にハマってます
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