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2015-07-23

まさに今剣と岩融!「牛若丸 弁慶 五条橋」(文楽)

   主従三世の縁の綱
        約束長き 五条の橋


 タイトルにてお分かりかと思いますが、牛若丸と弁慶の出会いのシーンを語ったものです。
 「鬼一法眼三略巻」というお芝居の五段目らしい。

 これは、とうらぶの義経主従クラスタにはかなりオススメですよ。牛若丸がかなりの強気ショタで、それに翻弄される大男弁慶という、もう我々がまさに見たかった! 義経主従がここにおるよ!! この演目の牛若丸はものすごく今剣ちゃんのあるじさまという感じがします。似てる!!

 このお話では五条橋で千人斬りしているのは牛若丸のほうで、それを懲らしめて召し使おうと思って弁慶がやってくるわけです(実際には召し使われるんですが)。
 若君(牛若丸)が千人斬りしてるのは修羅道に落ちた父を弔うため、という取ってつけたような設定が冒頭で語られます。あの英雄・源義経が若気の至りとはいえ、理由もなく千人斬りをしていてはやはりまずいのでしょうね。
 牛若は女装しています。女装ショタです。牛若といえば女装。

 五条橋で二人はすれ違います。牛若ちゃんの姿は「青柳の糸より細き腰つき」の女性ですから、お坊さんの弁慶は恥ずかしくて声もかけられず、橋のかたわらに寄ります(なにこのかわいい生物)。
 そんな弁慶を見て若君は「ちょっとなぶったろ(彼をなぶつてみん)」と、弁慶が右によければ右に、左に行けば左に寄って、通せんぼをします。そしてすれ違いざまに薙刀の柄を蹴り上げます。
 完全にケンカ売ってます。チンピラの所業です。
 これにはさすがの紳士・弁慶もキレる。薙刀を押っ取って切りかかりますが、若君これをひらりとかわし、薄衣を薙刀の柄に投げかけます。これはおそらく視覚的な美しさの効果を狙った演出であると共に、ここで牛若丸が本性をあらわす、という表現かなと思います。
 牛若は佩刀薄緑を抜き、弁慶と打ち合います。ちなみにこの演目ではっきりと名前の出てくる刀は薄緑だけ。弁慶の薙刀は権現様から賜ったという設定になっています。岩融は近年になってメジャーになってきた名前のようで、この頃の作品ではほぼ出てきませんね。
 
 牛若丸はひらり欄干に飛び移り、薙刀の刃の上に乗って弁慶の動きを封じたり。立ち回りの美しさと面白さが魅力です。牛若、完全に弁慶をおちょくってます。腹立ちますね。かわいい。
 ついに弁慶は薙刀を打ち落とされ、組もうとするも斬り払われ、万策尽きます。
「汝は何者」
 好敵手に名前を尋ねるのは古来からのならわしですね。「汝」と言っているのでこの時点では弁慶タメ口です。
「ホゝ、我こそは、源牛若丸」
「したり、道理で大抵の人でないと思うた。今より後は御家来、コレ可愛がって下さんせ」
 と頭を下げるのですが、なぜかこの場面でフフッて笑いが起きたんですよなあ。大阪やからかなあ。
 大男がショタっ子に縮こまって頭下げてるのがかわいくて笑っちゃうんでしょうな。
 はっきり言って、めちゃかわいい。もう、萌えしかない(真顔)。

 すごく短い幕ですが、本当にツボを押さえた演目で、牛若・弁慶が好きな人にはたまらん景事になってます。もう、グッジョブしかない。人形も義太夫も作った人分かってる。わたしいつの間に文楽書いたの? ていうくらい理想の主従がそこに。。。


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2015-07-14

「義経千本桜」③ 三段目~五段目

三段目
 今回三段目についての詳細な説明は省きます。なぜなら、この段には、義経・弁慶が出てこないからです。この部分では死んだはずの平維盛が生きていて、出家するまでのお話をえがきます。義経主従クラスタへオススメするという今回の本題から外れるので省くだけで、お話としては大変おもしろい名作ですので、興味があればぜひご覧くださいね。

四段目
道行初音旅

 ここも義経たちは出てきません。義経に会うために、静かと忠信が旅をする話。これも人気の演目でよく出ます。

蔵王堂の段
 この部分は、現在歌舞伎ではまず演じられることはないです。義経たちをかくまっている河連法眼が、他の法師たちと評定しています。義経につくべきか、頼朝につくべきか。法眼は他の法師を信じていないので、ここは「頼朝につく」と言って去ります。

河連法眼館の段(四の切)
 お待たせいたしました。やっと義経が出ます河連法眼館の段、通称「四の切」。人気演目です。「四の切」とは四段目の最後、主要となる部分(切場)の意味。「四の切」というだけで、通常この「義経千本桜」の四段目切場を指します。それくらい代表的で有名な演目ということです。
 ちなみに弁慶は東北への脱出ルートを確保に行っていてもうここにいません。。。。。な、なんで……なんで大事なところにおらんのwww

 吉野山に逃げてきた義経一行は、義経の鞍馬山時代の知合いの河連法眼の館に身を潜めています。先ほどの段で他の法師たちを信用しなかった河連法眼、自分の妻も信用できるかどうか分からないので、妻を試すために彼女にも「自分は変心して頼朝につき、義経を討つつもりだ」と言います。妻は自分が疑われていると知り、憤慨して自害しようとしますが、法眼は疑いは晴れたと言って、それを止めます。話を聞いてきた義経も奥から出てきて、二人の志に感謝します。

 この「義経千本桜」の義経は何かしてもらったら必ず礼を述べにきます。三段目で銀平に助けられたときも礼を言いに出てきました(書き忘れたけど)。
 法眼はともかくとして、町人にまでも謝意をあらわす厚情で有徳の君、というのがこの「義経千本桜」の義経像です。そんな義経が弁慶には(理由があるにせよ)折檻するんだから、主従、尊い。

 さて、そこに忠信がやってきます。喜ぶ義経。
 忠信との再会ももちろんうれしいですが、義経的には忠信に預けた静に会いたい。「静は?」って聞いちゃうのも道理ですわな。だが、忠信は「なんのこと?」て感じです。
 お前には京都で名前までやって、静を預けただろう、と義経が言うと、
「身に覚えなき事。私は出羽に帰った後、すぐに義経様に合流したかったけれど破傷風にかかってしまい、行くにいかれず、やっと病も癒えたので、急ぎこの吉野へ来たばかり」
 と言います。
 さてはコイツ、裏切って静を鎌倉に引き渡したな。義経はそう思って怒ります。
 しかし、そこへまたもう一人の忠信が静を連れてやってきたとの知らせが。

 静が初音の鼓を抱えてやってきます。我が君様に会えてうれし涙を浮かべる静。しかし義経はまず「忠信はどうした」とききます。忠信を見失っていた静は、控えている忠信を見つけて
「次の間までは一緒に来たのに抜け駆けとは、戦でのクセの抜けないお方だなあ(当時の戦では一番乗りは誉)」
 と戯れかけます。
「その忠信はお前と来た忠信ではない」と義経に言われて、「そういえば、小袖の柄も違うような……」と静もいぶかしみます。
 道中、忠信に不審な点はなかったかと聞かれ、静は「そういえば、思い当たることがある」と語ります。

 忠信は初音の鼓の音色が以上なほどスキで、その聞き入る姿は時におそろしく感じるほどだった。
 また、忠信はいつの間にかいなくなっていることがあったが、静が初音の鼓を打つと必ずどこからともなくまた現れてここまで旅をしてきたというのです。

 鼓を打てば必ず現れるのならば、それを利用して詮議しよう、ということになりまして、義経はこの鼓を打てませんから、静に詮議を任せて一同は奥へと引っ込みます。

 一人になった静は初音の鼓を打ちます。するとどこからともなく忠信が現れ、鼓に聞き入る様子。尋常ではありません。
 静は隙をみて忠信を切ろうとするが、かわされます。切られる覚えはない、と言う忠信ですが、静は初音の鼓で忠信を追い詰め、忠信は観念して初音の鼓と自分との関係を語りはじめます。
「昔、日照りが続いたとき、雨乞いのために年を経たキツネの皮を使ってこしらえたのがこの初音の鼓。キツネは陰のケモノなので、その音はたちまち雨を呼び、民草は喜んだ。その鼓は、私の親なのです」
「鼓が親とは……、さてはそなた、キツネじゃな」
 静に正体を言い当てられた忠信は本性をあらわします。白狐です。ちなみに白狐に変わる前から忠信の本性が見え隠れしていて、動きや喋り方(狐言葉と言われる、不自然に音を伸ばしたり詰めたりする独特なしゃべりかた。ちょっとかわいい)に現れているのでそこも注目してみてください。
「親が殺されたときにはまだ幼く、親孝行の一つも出来ずに終ったのが悲しく、恥ずかしい。そのせいで官位(神格)も上がらず情けないことです。今まで初音の鼓は宮中にあって容易には近づけなかったが、この度義経公がたまわったので、せめてお傍にいて、また、鼓の所有者となった義経公のためにも力になりたいと付き従ってきた。しかし、本物の忠信様に嫌疑がかかり、迷惑になるので、もう去れと、親の鼓も音で知らせてきます」
 と言って名残惜しげに鼓を見やり見やりしながら、ふっと消えてしまいます。

 奥から出てくる義経。義経も親子の縁がうすく、またやっと相見えた兄に仕えてきたが憎まれ、討たれようとしている。自分と狐の親兄弟の縁の薄さを重ね合わせて嘆き、狐を哀れんで静に「鼓を打ってすぐに呼び戻せ」と言いますが、不思議やな、鼓は打てども音がしません。どうやら鼓も親子の別れを嘆き悲しんでいるようだ、と静も悲しみ嘆きます。

 と、突然また狐が現れます。ここはあんまりなんでまた帰ってきたのか説明がないのでよく分かりません。「義経怒ってない?」と思って帰ってくるのかな?
 義経は、ここまで静を守ってきてくれた褒美に狐に初音の鼓を与えると言います。狐、大喜び。
 上皇から賜ったものを、勝手に畜生に譲っていいんでしょうか? ちょっと心配になります。
 すると、初音の鼓がひとりでに音を立てます。狐が、はっとして言うには「今夜、荒法師たちが義経を捕まえに攻めてくる」とのこと。
 狐が幻術を使って荒法師たちを招き入れ、同士討ちさせたりして追い返してしまいます。そして狐は初音の鼓と一緒に喜びながら飛び去っていきます。
 現行の歌舞伎はこれで終わりです。源九郎狐ちゃんよかったね、で大団円。桜吹雪散らして派手~に終ります。このあとの5段目が歌舞伎で演じられることは、現在まず無いです。

 本当は四段目はもうちょっと続きがあって、荒法師は狐の助けもあって全部捕らえることが出来ました。しかし敵の大将、覚範上人は館の奥まで入ってきます。そこに義経が「平教経待て」と声を掛けます。なんと、覚範上人は死んだはずの平教経だったのです(またか)。
 義経は教経と数度刃を交えて、そのまま奥へ引っ込みます。それを追いかけていった教経、そこで安徳帝を発見します。安徳帝を連れて出て行く教経と義経は改めての決戦を約束して別れます。

 この四の切は狐忠信が主役です。突然現れ、突然消えるしかけ、狐っぽい動きなどが見所。
 わたくし、三代目猿之助(現・猿翁)さんの大ファンなので特筆いたしますが、現在歌舞伎の狐忠信のケレンは、すべて三代目猿之助さんの考案した型です。狐忠信の方は音羽屋(尾上菊五郎家)型と澤瀉屋(市川猿之助家)型がありますが、音羽屋もケレンの部分は現在、澤瀉屋のものを使用しています。
 引抜(一瞬での衣装替え)、二階部分から飛び降りてくる仕掛けなどなど、本当に驚くような仕掛けがいっぱいですので、是非ご覧くださいね。

五段目 吉野山の段
 ここもそんなに義経の出番はありません。結末に持っていくためのエピローグ的な感じがあります。
 教経と忠信(本物の方)が決着をつけます。教経は忠信の兄を殺しているので敵討ちですね。雪の吉野山。忠信は源九郎狐の力も得て、勝ちます。
 そこに川越がやってきて、「頼朝を討て」との院宣は朝方の謀略だったことが判明したので、朝方の処遇を義経に任せるという後白河院のお達しを伝えます。平家討伐を命じた朝方は教経にとっても敵なので、教経が朝方を討ちます。その朝方を忠信が討って平家はここに滅びた。で終わり。
 ちょっと暗い。やっぱり四の切でかわいい狐ちゃんを見送って良かったな、で終ったほうが楽しく終れるかもしれない。歌舞伎はそういうのを重視したんでしょうな。

 ただ、この「義経千本桜」は全体を覆っているこの悲劇の予感こそが持ち味なんだろうな、とも思います。みんな、この後義経が非業の死を遂げるのは知っています。最後に待ち受ける悲劇を知りながら、でもこのお芝居では一応義経は勝った(?)形で終わる。この一瞬の輝きを捕らえているから、この作品はウケるんだろうと思います。

 今回も、義経・弁慶に関係の無い部分をかなりはしょって書いています。「義経千本桜」の詳細は文化デジタルライブラリーにちゃんとした解説ページがあるので(またか)、そちらでご覧ください。
http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/contents/learn/exp3/index.jsp


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theme : 歌舞伎
genre : 学問・文化・芸術

2015-07-07

「義経千本桜」② 碇知盛

渡海屋・大物浦の段(碇知盛)
前エントリからの続き。

 この段の主役は平知盛。義経・弁慶は添える程度ですが、だからこそ、稀代のスーパースター義経主従の風格が問われます。風格ある義経だと全体が締まるし、知盛の悲哀も際立ちます。「さすがわが君様・・・・・・!」てなります(私は)。これが義経・弁慶役の人形遣い、役者の「しどころ」じゃないかなと思います。

 さて、義経たちは尼崎の大物浦まで来ました。ここから九州へ渡りたいのですが、天気が荒れて足止めを食らって舟宿に泊まっています。
 外に行っていた弁慶が、舟宿へ帰ってきます。そして、弁慶は眠っている舟宿の娘の頭をまたいでいこうとしますが、足がしびれて出来ません。不思議だなあ、というシーン。
 実はこの女の子、身分を偽って暮らしている安徳天皇その人なのです。壇ノ浦で死んでいるはずですが、実は生き延びていた、という設定です。高貴な方だったので、弁慶はまたぐことができなかったのですね。そのまま、弁慶は奥へと引っ込みます。
 奥にはもちろん義経公がいます。弁慶は、この「女の子またげなかった事件」を確実に報告するでしょう。
 実は後で明らかになりますが、義経はこの時点ですでに、この子は安徳帝ではないかと疑っています。弁慶が安徳帝をまたごうとしたのは、確かな証が欲しくて義経が命じたことなのか、もしくは弁慶がやっぱり粗忽者なだけの考えなしの行動か。
 私としては、いくらなんでも義経が帝(かも知れない方)の頭をまたげなどという不敬を命じるとは考えにくい。やっぱり粗忽者弁慶ちゃんがそうとは知らず仕出かしたことではないかなあ、と思います。かわいい。どちらにせよ、この一件で義経の疑いは確信に変わったのではないでしょうか。(描かれていない義経主従のエピソードを妄想するのは得意です。)

 そこに、北条(頼朝の舅筋)の家来だという相模五郎がやってきます。義経が九州へ渡るという情報があるから九州まで追討にいく途中とのこと。舟を出せと、舟宿の女房お柳に言います。お柳は先客(義経)がいるので、と断りますが、相模は納得しません。お柳に乱暴をしようとするところに、この舟宿の主人・銀平が帰ってきます。
 アツシを着て、荒々しさの中にも粋を感じる男前。銀平はさっそうと相模をやっつけてしまいます。

 騒ぎを聞きつけて奥から義経公が出てきます。「旅の難苦に疲れ果てたる御かんばせ」という義太夫のとおり、運命に少し疲れてしまった薄幸の貴公子です。おいしい。
 実は銀平は彼を義経と知った上で泊めています。追手が迫ってきているので早く出発するよう急かす銀平。天気模様を心配する義経一行ですが、プロの銀平が大丈夫と言うので、信じて舟へと向かいます。銀平も準備のため一端引っ込みます。

 義経一行がいなくなったあと、突然、銀平が白装束に白糸威しの鎧を来て現われます。実は、銀平は壇ノ浦で死んだはずの平知盛だったのです。女房のお柳は、安徳帝の乳母、典侍の局でした。彼らは平家を滅ぼした源氏に復讐するつもりで、義経を舟宿に泊めていたのでした。
 先ほど現われた追手の相模五郎も実は銀平の家来で、あの騒ぎは、義経を急かしてこの嵐の中出航させて殺すための芝居だったのです。知盛は義経を殺した後には頼朝を狙うつもりですので、頼朝には知盛は死んだと思われていたほうがよい。義経は知盛の幽霊にとり殺されたのだと思わせるために、白装束を着ているのです。
 決戦は海で行います。舟の明かりが消えたら敗戦の合図なので、お覚悟を、と言って知盛は戦に出かけます。

 奥座敷に場面が変わると、お柳と女中は官服を来ておすべからし。安徳帝は禁色の山鳩色の服を着ています。突然の宮中。典侍の局も先ほどまでの世話女房的なしゃべり方はどこへやら、完全に貫禄ある貴人の体。この変わりようがみどころです。
 相模五郎が報告にやってきます。さっきのよわっちい姿はどこへやら、具足姿も勇ましい武者です。義経が反撃してきたということを物語り、また戦場へと戻っていきます。そして、舟の明りが全て消え、もう一人の武者がご注進に駆けつけ、知盛の劣勢を伝えます。
 覚悟を決めた女中たちは、次々入水します。典侍の局も安徳帝を諭して、一緒に入水しようとします。ここの流れは平家物語から取っていますが、かなり美しいです。そして、いざ入水しようというところで、義経たちがやってきて、典侍の局と安徳帝を助け出します。

 追い詰められた知盛は満身創痍で安徳帝を探しにやってきます。そこに安徳帝を左手に抱えた義経が登場。もう諦めろと説得しますが、当然聞く耳を持ちません。
 力では敵わないと、弁慶が数珠で仏法を持って倒そうとしますが全然知盛の怒りは治まりません。むしろものすごい形相がやがて悪霊の表情へと変わっていきます。
 安徳帝は幼いながらも感じるところがあり、知盛にこう語りかけます。
「我を供奉し、ながゝの介抱は、そちが情け。今日また麿を助けしは、義経が情けならば、仇に思うな、知盛」
 臣下に対して、あまりにも情け深いことばに、知盛は戦いをやめます。そして「これも、父清盛が、女の宮を男と偽り、帝に立てるなどという恐れ多いことをやった報いが、全て私に降りかかってくるのだな(だいたいの意訳)」と突然衝撃の事実を口走ります。
 安徳帝は女の子だった!!!
 平家物語でも安徳帝は女だったんじゃって匂わす発言はありますが、恐れ多いことなのではっきり書いてなかったんですが、江戸時代になるとはっきり書いてよかったっぽいですね。
 知盛は義経に安徳帝のことをくれぐれも頼んで、知盛の霊は海に沈んだと伝えよと言って、身体に碇を巻き付けて、海に沈んでいきます。
 この時に、安徳帝が「さらば、知盛」と声をかけるのも、なかなか泣かせる。
 このシーンで、義経がしっかりと知盛の思いを受け取ったということが表現されてないと、知盛が碇を背負って沈んでいく悲しみがちゃんと浮き出してこない、と思います。

 最後に、歌舞伎だと花道で弁慶が知盛を弔うほら貝を吹くのですが、ここの役者の思い入れがお芝居を見終ったあとの満足感を左右すると思う。

という、まあ、めっちゃ活躍するわけではないが、なかなかかっこいい義経主従でございます。

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2015-07-04

「義経千本桜」① 大序~鳥居前 (文楽・歌舞伎)

 義経主従クラスタに捧げる演目紹介3。

 「義経千本桜」は、そのタイトル通り、ほぼ全編に渡って義経が出てくる、義経クラスタならば見ておいて損はない演目です。ただ、人気のある部分だけ抜き出して演じられることが多いので(ミドリ)、選択を間違えると「義経出て来なかった……」という場合もあるので注意。
 「通し狂言(全体を通して上演すること) 義経千本桜」と銘打たれているときは、行っておいたほうがいいと、私、思います!!

ご参考程度に、 義経主従クラスタにオススメの演目順位(私見)
1、通し狂言「義経千本桜」    義経も、弁慶も、いっぱい見れる!!!
2、鳥居前(この下で解説)    たまーにミドリが出る。主従の契りが深く描かれる、クラスタ的に一番のみどころ!!
3、四の切(次次回解説予定)  弁慶は出ないが、義経の情の深さ、悲しみなどがよく表現されている
4、碇知盛(次回解説予定)    弁慶も出てくるが、主従とも出番は少なめ。知盛ちゃんメイン

義経弁慶が出ないけど、よく上演される2つ
○椎の木・小金吾討死・すし屋
維盛ちゃん方の話で出番なし。だが名作
○道行初音旅(吉野山)
静が義経に会うため忠信と旅をしているところ。文楽と歌舞伎で結構演出が違う。どちらも美しい。

 ではお話を順を追って紹介していきたいと思います。

大序
 通しのときしか上演されない上に、しかも通しなのにハブにされたりしがちなところですが、義経主従クラスタ的には大変おいしいのがこの箇所です。

 義経は、後白河法皇に「初音の鼓」を賜りますが、これは「頼朝を討て」との上意なのです(「討つ」と鼓を「打つ」をかけている)。困った義経は鼓を返上しようとするが、後白河院の寵臣、藤原朝方はそれを許しません。キレた弁慶が朝方に食ってかかりますが、義経はそれを叱りつけます。
 忠義ゆえの悪口を叱られる弁慶ちゃん。なにこの主従。尊い。

 この後、維盛ちゃんの奥さんが都落ちする話が続きます。あんまり主従に関係ないので省きますが、個人的には平家権勢を誇ったときに常盤御前が牛若丸たちを連れて逃げた姿にかぶって、悲しみが湧きます。

 義経公の館では宴が行われています。さっき怒られた弁慶はまだ許されず、義経にお目通りかないませんでしたが、義経の正妻・卿の君と愛妾・静御前のとりなしによって許してもらいます。
 そこに鎌倉殿(頼朝)の使者、川越がやってきて、義経に謀反の疑いありと問い詰めます。そこで義経に謀反の疑いがかかるのは平家の娘である自分が正妻であるせいだと、平時忠の養女でもある卿の君が自害してしまいます。実は卿の君は使者川越の実の娘。川越も心で泣きながら卿の君の首を討ちます。
 すると表で陣太鼓の音が。鎌倉方の追手が早くも攻めてきたのです。今、ことを構えてはまずいと義経が策を練るうちに、なんと弁慶が門外で追手の大将の一人を討ってしまったとの報が。
 卿の君の犠牲が無駄になってしまったと嘆く一同。そのまま館を脱出します。
 弁慶が館に戻るとそこはもうもぬけの殻。弁慶は敵方相手に大立ち回りをして、もう一人の大将首をひっこ抜き(物理)、義経を追いかけていきます。
 弁慶ちゃん……!!
 
 義経千本桜の弁慶ちゃんはちょっと粗忽で、でも義経のために頑張る忠臣ですね。かわいい!!
 というすばらしい幕ですが上演されないことが多いので、「通し狂言」と書いていても前もって確認してみてくださいね。



二段目① 伏見稲荷の段(鳥居前)

 義経一行は稲荷前まで逃げてきます。そして弁慶も追いついてきます。弁慶は前の幕で大将首を2つも取ったので、わりと意気揚々と駆けつけます。かわいい。しかし義経からすれば、卿の君の犠牲を無駄にし、鎌倉方に言い逃れできない状況を作ったのはほかならぬ弁慶です。怒って弁慶を扇で散々に打つ義経公。義経公の折檻!!!
 弁慶はここでやっと自分のあさはかさに気付きますが、しかし、主君の命を狙う敵を目の前にして、どうして黙っていられましょう(意訳)とはらはらと泣きます。弁慶ちゃん……!!
 ここで静がまたも口添えしてくれて、義経も今は味方が一人でもほしいからしゃーないな(意訳)と許してくれます。
 ツンデレかな? 公ってツンデレかな?
 ここから義経一行は九州に向かうのですが、船旅は危ないので静は連れていけません。義経は静に初音の鼓を形見にあげるから、と言うのですが、静は「一人にするなら死にます」と泣くので、桜の木に静をくくりつけて(自殺できないように)置いていきます。
 書いてて自分でも弁慶のシーンの説明との温度差に驚きますが、ここのシーンも悲しくも美しいシーンです、と一言添えておく。

 そこに鎌倉方の追手、藤太がやってきます。この藤太はコミカルな役で、武士だけど強くはありません。義経の愛妾と初音の鼓を見つけて大喜びで連れ去ろうとします。ここで色々と面白いやり取りがあるので、肩の力抜いて楽しく見られます。
 そして、静が連れ去られそうになったところで、義経の忠臣、忠信がやってきて、さっそうと静を助けます。立ち回りがすごいです。不思議な力を使って藤太を倒す忠信。戻ってきた義経も大いに喜びます。

 愛する女を助けてくれたんで、忠信の株はだだ上がりです。義経公はご自分の名前「源九郎」を忠信に与えます。これはめっちゃすごい!! さらにご自分の御着長(鎧)まで与え、静を守るようにいいます。これはあるイミ、自分の妾を忠信に下げ渡したともとれます。昔のお貴族様は身分違いで結婚できない妾を部下に与えることがあったようです。
 義経はもう静に会うことができないかもしれないと考えていますから、その場合静が身の振り方に困らないようにと考えたかもしれません。名と装束を与え、静に忠信をオレと思えよ、と言ってるようにも見えます。
 なんにせよ忠信にとっては大変な名誉です。静と義経は涙ながらに別れを惜しみますが、義経と静を忠信と弁慶が抑えて二人は別れます。
 このシーンも!!!! 深読みすれば!! できると思う腐女子!!!!!!!!

という義経主従クラスタ大興奮の稲荷前でした。


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Author:tsubana
大阪在住、社会人やってる隠れのオタです。最近歌舞伎にハマってます
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・桃井はるこ などなど

  
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